「俺の家の話」3話感想【なんだかんだでこの家族は思い合っている】※ネタバレ有

ああ・・・皆、皆上手い。出てる俳優さん全員上手。

もう毎回言ってる気がするけど、ここまで全力で綺麗事を通す主人公を嫌味なく演じられる俳優がいるだろうかいやいまい。反語も食い気味になるほどのスピードで叫びたい。もう俺があいつであいつが俺で状態。つまり長瀬が寿一で寿一が長瀬で、何が言いたいかというとこんなドラマ作るクドカンもこんな役やれてる長瀬くんもすごいなあってしみじみ噛みしめてる人一体何十人何百人いるんだろうという話です私も含めて。

「介護にまさかはない、肝に命じます」

と、ストレートに自分の非を認めて謝れる。こう在りたい。こう在りたいっての本当に。
寿一は自分が悪かったことは素直に反省する。
ショックを受けたら素直に葛藤する。
悩み方すら真っ直ぐだ。
真っ直ぐ過ぎて言わなくていいことをつい言っちゃうときもあるけどそれでも真っ直ぐだ。
本当にさあ、
取り敢えず寿一がそんなに怒られなくて良かったよお・・・

「渋い~」「素敵~」「機能的だよね」「飽きの来ないデザイン」「折りたためるから場所も取らない」「疲れたら座れるし俺も欲しいくらいだよ~」
とかシルバーカー褒めちぎるくだりも、
「プレゼントがありまーす!」のところで「スタップ細胞か~?」って超懐かしめのネタ挟むところもテンポ良過ぎて。
シルバーカー拒絶されて舞が泣いちゃって黙ってられない寿一が
長生きしてもらいたいから皆気遣ってんだろ!ってバラして
しかもシルバーカーを手押し車って言ってキレられたり。

「バカな振りして言うから、バカになって聞いてくれるか?」って言う寿一に寿限無がアホになった世界のナベアツばりに「なぁ~にぃ~?」ってノッてあげるのも
長州力だけじゃなく武藤と蝶野まで揃えるのも本当に良い意味でどうかしてる。力のいれどころがおかしい。
でもおかしいからこそシリアスな展開でも落ち込まない。バランスがいいから心にグサッと刺さり過ぎない。ほど良くサクッと刺さって止まる。
あまりにもリアリティを追求したドラマは観ていてヒリヒリする。
かといって綺麗事だけが宙に浮いたようなドラマは遠い国の話過ぎる。
そこのバランスが本当に絶妙なんだ。緩急うまいなあクドカン。脚本の神様に愛された寵児。

あとねスーパー多摩自マンもなかなかだったけど、
スーパー世阿弥マシンの匂わせぶりね。

そんでこの世阿弥マシンが腰やっちゃって鋼の体幹頼りに棒立ちで耐えたり。
その上さくらの家の話に関する新作能、できる人が渾身の力で振り切れるパロディほど愉快なエンタメもないと思う。

こんだけ笑えるのにそこからのホロリだからまたニクいんだよね。

「無理しなきゃ2度と能舞台に立てないだろ」

っていう言葉、おそらくあそこにいる人間は
「多分無理だろうけどお父さんが前向きになってくれて良かった」
と思っただろう。

シルバーカーを押しながら、
「じゃ、人間国宝。笑われに行ってきまーす」
とヘラヘラ出掛けて行った道すがら、
寿三郎さんはさくらに「ヘルパー利用者」の口調で話し始める。
本当は全部わかってた寿三郎さん。
自分が気を遣われてることも、舞が自分のためにシルバーカーを買ったことも、さくらに振られたことも全部わかってた。

家族をできる限り心配させたくない、
自分がどのように人生をまとめていけばいいのかわからない、
「(広げた風呂敷を)散らかったままでいいんじゃないですか」
というさくらに、やっぱり自分で自分で畳まなくちゃいかんですよ
だって私あの子たちの父親なんですから
としっかりした口調で話すその姿。

ジーンとくるわこんなん・・・

からの世阿弥マシンね。
そして試合終わらせて速攻家帰って2人帰って来る前に風呂洗ってチャカチャカ餃子作って、マスク被ったまんまなの気付いてマスクはいでマスクを鍋掴みにしてフライパンのフタ開けて焼き立ての餃子、超美味しそうだった。

そんでその後入浴介助中に寿三郎のエンディングノートを見ちゃう寿一。
そこには「もう1度舞台に立つ」と大きく筆で書かれた文字が。
扉の向こうから寿三郎は
「今日さあ、もんのすごいねえ。体幹の強いプロレスラーがいたんだよ。
あいつ、プロレスなんかやめて能やればいいのになあと思ったなあ俺は」
なんて息子と知らず世阿弥マシンを褒める。

寿三郎がまた舞台に立ちたいと本当に考えてくれていること、
そして正体不明の覆面レスラーとしてとはいえ、初めて寿三郎に褒められたことに、うれし泣きを堪えるような表情をする寿一。
いやあ・・・やっぱり上手いわ・・・上手い人しかいない(そして感想の冒頭に戻る)

 

↑これはキレてないです

↑これは適度にキレてます