「俺の家の話」4話感想【世阿弥マシンのコスチュームはもう少し箪笥の奥に隠しとけ】※ネタバレ有

今回の話はタイトル通りに本当に寿三郎さんのくそジジイ的側面をあらわにした、何の文句もないタイトル通りの話でしたね。題名に偽りなし!

内容はざっくり言えば大州と秀生の姿に寿一がかつての自分と寿限無の姿を重ねる、という感じだったんだけど、いろいろな展開があちこちに入り組んで、しかもさくさく小ネタ挟んできて複雑な話だった。複雑でいて無意味なシーンなしという、瞬きすら惜しまれる密度の濃さ。

秀生がめきめき筋の良さを発揮し、子供向けイベントで初舞台を踏むことになった一方、一緒に舞台に立つ予定の大州は実はあまり能が好きではなく、別に活動しているダンスチームの活動に夢中。池袋の西口公園で定期的な練習を重ねていました。
ここで皆もうフライングでテンション高まりまくったよね。
予告で見てから1週間待ってたもんね。
「ついに来た」「もう感動した」「懐かしさに泣きそう」
とかいろいろな境地あったよね。

ある日稽古をすっぽかした大州。
大州の居所を秀生から聞き出した寿一は池袋西口公園へ・・・。
そう、かつての自分のホームグラウンドでもあった池袋西口公園に立つマコト。じゃなくて寿一。
しかもカラーギャングに絡まれたとき用とか言いながら首に金属チェーンぶら下げて「何年前の話だよ」って大州に突っ込まれてる。
ああー!なんて素晴らしいメタ!
まさか長瀬自らクドカン自らIWGPをネタに昇華するシーンを見られるとは思わなかったよ。生きていればいいこともあるものですね。

そしてOSDの経営するラーメン屋でラーメンを食べる寿一と大州。
大州が能を嫌っている姿、能から逃げたがっている姿を見て、かつての自分と重ねる寿一。そして寿限無に言われた「逃げる才能」について大州にアドバイスする。

このシーンもすごく良かったんだけどね、
今回の4話のMVPは私個人的にOSD

「店長、あんたスープのために死ねる?」
「(スープのために死ねると言った早稲田店店長との)その差が出てんだろうがよ食べログの星によお!」
「WOW!京極夏彦さんかと思ったらお義兄さんだ!」(寿一が着物に黒い指ぬきグローブはめてたからです)

などなど、今回も珍言の数々を連発していたOSDさんですが、
自分がラーメン屋になった理由について
「強いて言うとラーメン好きじゃないから」
なんて言いきるとはすごい男だと思いませんか。
義父と言えども仮にも人間国宝にあんな無謀に絡んでいくから只者じゃないレベルのすごいアホだなと思ってたけど、実は観山家親族で1番仕事の才能ありますね?

「ラーメン好きな奴ってさあ、ラーメン好きな奴の気持ちしかわかんねんだよなあ」
なんか頭カーンって殴られたくらい衝撃受けた。
まさかOSDの言葉でこんな衝撃くらうと思ってなくて悔しい。
好きなことを仕事にするのはもちろん理想的な形の1つだけど、
嫌いだからこそ持てる視点ってあるよねって話ですよ。
伊達にラーメン屋何軒も経営してる人じゃなかった。
「だから俺の意見?結構大事なんじゃないかなあ?ME~N!?(←MENと麺をかけてる)」っていうワードセンスのダサさすら霞むかっこ良さだった。

その一方で。私がOSDの仕事論に大きな感銘を受けている頃。
観山家では大変なことが起きていました。
寿三郎のエンディングノートには「寿限無のおとしまえ」という項目があって、寿一にはこれが何のことだかわからなかった。
でもね、これがなんと寿限無の出自に関わる重大な秘密だったんだよね。
昔寿一のお母さんが寿一を身籠って里帰りしていたとき、
寿三郎は当時観山家にいた女中に手をつけて妊娠させてしまった。
そして認知はできないながらもせめてもの世話として、
女中に好意を抱いていた番頭さんとの結婚をまとめ、
のちに女中が産んだ男の子には自分の名前の「寿」の一文字を贈った・・・
そう、寿限無は寿三郎の隠し子だったのです。

言われてみれば確かにおかしかったよね。
なんで寿一・舞・踊介の3兄弟は長男の寿一にしか寿の字が入ってないのに、
寿限無は寿が入ってる似た名前なのかと。
寿限無を跡継ぎにするため改名させたのかな?と思ったけど、
これは寿三郎の罪滅ぼしだったと、こういうわけです。

もう、寿三郎さんね、
本当に・・・
本当に・・・くそジジイです・・・

寿限無は今まで自分の養子という立場を考え、観山3兄弟より1歩引いたところから家を支えてきた。金欠の観山家をなんとか立ち行かせるため、宗家に黙ってデリバリーのバイトまでしてた。
能から逃げた寿一のように自分の気持ち1つで行動することもできず、ただ自分に用意された道を進むしかなかった寿限無
これまで寿限無が過ごしてきた何十年間のことを思うとその胸中たるや、壮絶過ぎて想像もつきません。

で、子供向け能イベント当日。
無事舞台に上がるかと思われていた大州は直前で行方不明に。
道成寺の鐘の下から大州の袴がはみ出ているのを発見した秀生は、
鐘の中から聞こえるすすり泣きを聞き、大州が見つからない振りをしておく。
開演が迫り焦る観山家の中で、寿一がピンチヒッターに立候補。

親子で舞うことになった「小袖曽我」は元々武士の兄弟が出てくる演目ですが、寿一は秀生と舞台に立っている最中に、昔同じ演目を寿限無と稽古していたことを懐古し、
「そうか、あのとき俺たちは兄弟で舞ってたんだな」と想いを馳せるんだよね。

親友で義理の兄弟でもあった寿限無が実は自分と血のつながった本当の兄弟で、
自分より後に習い始めたのに目覚ましい上達を見せる寿限無に焦り、
その頃2人で舞台に立つ当時の寿一の胸の中は、
ただただ能から逃げたい、寿限無と一緒に踊るのが辛い、比べられるのが嫌だ、
そんな気持ちばかりで占められていたはずで、

それが今、あの演目を本当の兄弟で踊っていたという因縁めいたものをしみじみと思い出せるまでになって。25年の月日がこうしたのかと、なんか心にグッとくるものがあった。

そして道成寺の鐘の中にいたのは実は大州ではなく寿限無だったんですけど、
秀生が大州と勘違いしたすすり泣きは、「承知しました」の一言で押し込めた寿限無のやりきれない気持ちだったんじゃないかなとか、

いろいろ気になるんですが取り敢えず、
次回は寿限無の恨みつらみが籠ったまさに怨霊のような清姫が観られるんでしょうか。